10.大規模水質特論 Word検索

 

エスチャリー

海に向って三角形に開いた河口部。海岸平野など,起伏の小さいところの河川が沈水して形成された。河口部はゆるやかで潮汐や海水の影響を強く受ける。三角江ともいう。(ブリタニカ国際大百科事典より)

 

水面からの蒸発量と陸からの淡水流入量の大小関係の相関関係で三つの区分に分類する。

区分内容
正の区分水面からの蒸発量が陸からの淡水流入量よりも少ない。
負の区分水面からの蒸発量が陸からの淡水流入量よりも多い。
中立の区分水面からの蒸発量と陸からの淡水流入量が同じ。

エスチャリーにおける流体力学モデルの計算過程(R1年 第1問より)
境界条件として、河川流量、外洋での水温や塩分、風の場などの気象要因等を用いる。
水柱を複数のレベルに分けて計算する三次元的マルチレベルモデルを用いる。
塩水、淡水等の流体を、回転する粘性、非圧縮性流体として扱う。
観測結果との比較により、計算結果を検証する。
浅海域では、海水の密度を温度と塩分から計算できる。

エスチャリーにおける流体力学モデルの計算過程(R3年 第1問より)
海域の密度場は,水温と塩分から計算される。
流体は回転する粘性,非圧縮性流体として扱っている。
3 次元的マルチレベルモデルでは,鉛直方向の速度成分は,水平方向の速度成分の結果から連続の方程式を用いて計算する。
モデルの検証は,潮流楕円や水温,塩分等の観測結果との比較でなされる。
重力加速度やコリオリパラメータも考慮している。

 

海域における溶存酸素

海域における溶存酸素(R2年 第1問より)
2016(平成 28)年に底層の溶存酸素量が生活環境項目に追加された。
植物プランクトンは光合成で酸素を生成し,呼吸で消費する。
大気との交換量は溶存酸素量と飽和酸素量及び再曝気係数を用いて計算できる。
底層における貧酸素水塊の形成が青潮の原因となる。
デトリタスの分解により栄養塩が生成される。

 

海水中の溶存酸素を計算する式(R1年 第2問より)
アンモニア体窒素の酸化によって消費される。
溶存体有機物の分解によって消費される。
植物プランクトンの光合成によって供給される。
亜硝酸体窒素の酸化によって消費される。
硝酸体窒素は窒素化合物の酸化によって生じる最終生成物である。

 

酸素飽和度

酸素飽和度(SaO 2 )
酸素と結合したヘモグロビンの濃度を(HbO 2 )、酸素と結合していないヘモグロビンの濃度を(Hb)とすると、次の式で表される。
すなわち、実際にヘモグロビンと結合していた酸素量を、ヘモグロビンと結合し得る最大の酸素量で割った値を、百分率にするために100をかけた値である。 こ
のことから明らかなように、酸素飽和度が100を超えることはあり得ない。
 

デトリタス

生物遺体や生物由来の物質の破片や 微生物 の死骸
あるいはそれらの排泄物を起源とする微細な 有機物 粒子のことであり 、通常はその表面や内部に繁殖した微生物 群集 を伴う。
. 陸上の 土壌 に混入した有機物片のことを指す場合もあるが、多くの場合は水中のそれを指す。
. プランクトン とともに水中の 懸濁物 (けんだくぶつ、セストン)の重要な構成要素であり、 堆積物 にも多く含まれる。
 

植物プランクトンの増殖の計算

海水中の溶存酸素を計算する式(R1年 第3問より)
⑴ ポテンシャル増殖速度は,温度の関数となっている。
⑵ 栄養塩の摂取については,ミハエリス-メンテンの式が使われている。
⑶ 水中での光強度は,ランバート-ベールの法則に従って計算される。
⑷ 光合成速度の計算では,強光阻害の効果が考慮されている。
⑸ 栄養塩の摂取については,制限の強い栄養塩濃度を選んで計算する。

 

 

吸光度

吸光度(きゅうこうど)
溶液の各波長における光の吸収の程度を測定する際に,等しい厚さの純溶媒および溶液に対する透過光の強さをそれぞれ I0 および I とすると,log10(I0/I) は溶液の光吸収の強さを表わす尺度のこと。
微量物質の濃度を求める方法としてランバート-ベールの法則(水中での光強度の減衰を求める式)がある。

 

吸光光度法(きゅうこうこうどほう)
試料溶液に光をあて、その光が試料を反射する際の、対象となる物質による光の吸収の程度、吸光度を測定することにより、その物質の濃度を定量的に分析する方法である。
吸光光度分析法(きゅうこうこうどぶんせきほう)とも呼ばれる。

 

COD

CODとは
水系に存在する有機物質の指標であり、化学的酸素消費量のこと。
COD濃度は生態系構成要素の有機物状態変数からの換算によって求める。
CODの内部生産(当該海域で生産された有機物)には、植物プランクトンが関係している。
富栄養化の進んだ閉鎖的水域では、植物プランクトンによる内部生産のCODの考慮が必要。
工場や河川からのCOD負荷を外部負荷(窒素やリンなどの栄養塩)といい

 

海水中の溶存酸素を計算する式(R2年 第3問より)
⑴ COD の内部生産には植物プランクトンの増殖が関係している。
⑵ 海域の A 類型の COD 環境基準は 2 mg/L 以下である。
⑶ 海底堆積物からの栄養塩の負荷量は,海底堆積物からの栄養塩の負荷は海域ごとに異なる
⑷ 外洋から対象海域に供給される負荷は,その海域のバックグラウンドの水質を決める主要な因子である。
⑸ 負荷の発生源として,農地,畜産排水,山林などについても発生量を把握する必要がある。

 

 

BOD

生物化学的酸素要求量(水中の有機物の代表的な汚染指標【生活環境項目】)
生物が水中にある有機物を分解するのに必要とする酸素の量(mg/l)。
河川の汚染度が進むほど、この値は高くなります。
BODが高いということは、
溶存酸素(水中に溶解している酸素ガスのこと。河川の自浄作用や魚類をはじめとする水生生物の生活には不可欠。)が欠乏しやすいことを意味します。
(BOD値のめやす) BOD10mg/l以上では、河川中の酸素が消費され、悪臭の発生など嫌気性分解に伴う障害が現れ始めます。
上水道水源としては、BOD3mg/lを越えると、一般の浄水処理方法では処理が困難となるとされています。

生態系モデル

生態系モデルとは
主に食物連鎖等に基づいて、これらの構成要素間の相互作用を数式化した上で、生体元素である炭素、窒素及びリンなどの元素を用いて定量化するモデル。
このモデルに於いては内部生産として植物プランクトンによる一次生産が想定される。
エスチャーリーのモデルでは拡散方程式の枠組みが取り入れる。

 

海洋生態系モデルにおける植物プランクトンの増殖速度の算出方法(R3年 第3問より)
⑴ 最大可能増殖速度は,生理学的 Q10 値を用いて温度の関数として計算することができる。
⑵ 水中での光強度の減衰は,ランバート-ベールの法則に従う。
⑶ 強光条件下では,光合成がしばしば阻害されるため,これを考慮した光合成-光曲線の式が提案されている。
⑷ 栄養塩の摂取は,ミハエリス-メンテンの式で記述できる。
⑸ 栄養塩の摂取については,制限の強い栄養塩濃度を選んで計算する。

生態系モデルにおける植物プランクトン(R2年 第4問より)
⑴ 植物プランクトンの最大可能増殖速度は,水温の関数によって表現されている。
⑵ 植物プランクトンによる窒素や,りんの摂取については,ミハエリス-メンテンの式で記述される場合が多い。
⑶ 植物プランクトンの光合成-光応答の式では,強光阻害の影響を導入するために,最適光量というパラメータが使われている。
⑷ 植物プランクトンの増殖速度は,最大可能増殖速度,光の制限項,栄養塩制限項の積として計算する。
⑸ 水中の光強度はランバート・ベールの法則に従う。

海水中の溶存酸素を計算(R3年 第4問より)
⑴ 表層での飽和酸素濃度と大気中の酸素濃度の差から,表層の水温や塩分を計算する。
⑵ 懸濁体有機物の分解によって酸素が消費される。
⑶ 植物プランクトンの光合成によって酸素が供給される。
⑷ 動物プランクトンの呼吸によって酸素が消費される。
⑸ 植物プランクトンの呼吸によって酸素が消費される。

 

TOD(Total Oxygen Demand)

水中に含まれている汚濁物質に酸素を吹き込んで完全に燃焼させるとき必要な全酸素消費量。
全有機炭素(TOC)とともに、水の汚れの程度を表す指標となる。
有機中のC:N:Pの原子比がm:n:1の時には下記の計算式が成り立つ

 

全酸素消費量とは
試料を燃焼させたとき、試料中の有機物の構成元素であります。炭素、水素、窒素、硫黄、リンなどによって消費される酸素量と定義。
TOCとは
全有機体炭素量のことで、水質汚濁の指標の一つ。水中に存在する有機物中の炭素量と定義されています。

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R1年 第4問より)
植物プランクトン中の C:N:P 原子比(m:n:1 )が 120:12:1 の場合,植 物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比〔TOD/C(質量比)〕

 

 

水の再利用

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R1年 第5問より)
⑴ カスケード利用では,機械工場におけるコンプレッサーの冷却水を酸洗工程の洗浄水として利用するなど,間接冷却水を洗浄用水へ利用するケースが多い。
⑵ 冷却塔を利用して間接冷却水を循環利用する場合,水質の悪化が起こるので,一定の循環水のブローと新たな水の補給を行う必要がある。
⑶ 鉄鋼業の連続鋳造や熱間圧延の工程では,冷却水へ懸濁物質が混入するため,沈殿,ろ過処理の後に循環利用する。
⑷ 工場からの総合排水を公共下水道に放流しているケースでは,これを処理して処理水を再利用することにより,下水道使用料を節約することができる。
⑸ 工業団地などで,工場の製造工程内の排水を同一工程の同一用途に再利用する方式が経済的であり,再生利用のほとんどのケースが該当する。

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R2年 第5問より)
⑴ カスケード利用の例として,間接冷却水を洗浄用水などに利用するケースがある。
⑵ 再生利用の中では,同一工程の同一用途に再使用する方式のほうが経済的であり,一般に適用されている。
⑶ 一般に,排出水を系外に出さずに 100 %循環させて再生利用するクローズドシステムでは,脱塩技術が不可欠となる。
⑷ 一般に,開放循環式冷却水系におけるスケールの析出やスライムの発生を防止するためには,循環水系に薬品を添加する方式が用いられる。
⑸ 半導体製造工場では,一工程が終わるごとに超純水により洗浄が行われ,これらの工程からの排水のうち天然水に比較して純度的にかなり良好なものは,再利用が行われる。

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R3年 第5問より)
⑴ カスケード利用の例として,間接冷却水を洗浄用水に利用するケースがある。
⑵ 循環利用の例として,排ガスの洗浄塔で洗浄用水を循環利用するケースが挙げられる。
⑶ 局部的再生利用の例として,鉄鋼業の連続鋳造や熱間圧延の工程における冷却水を沈殿・ろ過処理して常時循環利用するケースが挙げられる。
⑷ 工場単位再生利用は,工場内の各工程から発生する水を総合し,処理水を再利用する方式であり,下水道使用料を節約するために行われることもある。
⑸ 局部的再生利用は,工場団地などにおいて各工場の排水を集中処理し,再び各工場に工業用水として供給する方式で,スケールメリットがある。

 

濃縮倍率を求める

濃縮倍率を求める式
N:濃縮倍率 1.0E:蒸発量/B:ブロー量+W:飛散量

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R1年 第6問より)
ある開放循環式冷却水系が、循環水量に対し蒸発水量1.0%、飛散水量0.1%で運転されている。

 

⑴ ブロー水量を循環水量に対して 0.4 %にしたとき,濃縮倍数は 3 となる。
 N:濃縮倍率 =1.0+1.0/(0.4+0.1)=1.0+1.0/0.5=3
⑵ ブローをしない場合,理論的な濃縮倍数は 11 となる。
N:濃縮倍率 =1.0+1.0/(0+0.1)=1.0+1.0/0.1=11
⑶ ブロー水量を蒸発水量と同じにした場合,濃縮倍数は約 1.9 となる。
N:濃縮倍率 =1.0+1.0/(1.0+0.1)=1.0+1.0/1.1=1.9
⑷ 濃縮倍数を 5 以下にしたい場合,ブロー水量は系内循環水量に対して0.15 %以上にしなければならない。
⑸ ブロー水量を循環水量に対して 0.5 %にしたとき,補給水量は 1.6 %になる。
補給水量を求めるには。
E:蒸発量+B:ブロー量+W:飛散量=1.0+0.5+0.1=1.6%

 

開放循環式冷却水系

開放循環式冷却水システムでは、循環冷却水の蒸発および飛散により、循環冷却水は徐々に濃縮される。 このため、循環冷却水中の塩類(例えば補給水由来の重炭酸イオンやカルシウムイオン)濃度も徐々に高くなり、炭酸カルシウム等の析出によるスケールが発生し易くなる。
5.8℃の温度差で循環水量の約1パーセントが蒸発する。
冷却水系は系内の保有水量を一定に保った状態で運転
冷却水系は系内の保有水量を一定に保った状態で運転
濃縮倍数とは循環水中での塩類濃度が補給水に対しての倍数の指数である。
N:濃縮倍率 1.0E:蒸発量/B:ブロー量+W:飛散量


スケールとは
空気中または他の酸化雰囲気中で加熱したとき表面に生じる酸化物の被膜

 

植物プランクトンの全酸素要求量と炭素の組成比(R2年 第6問より)
⑴ 大部分の冷却水は系内を循環するが,蒸発や水滴としてのロス,軸受や配管系からの漏れ及びブロー水としての系外への排出があるため,水の補給が必要となる。
⑵ 濃縮倍数とは,循環水中の塩類濃度が補給水の塩類濃度の何倍かを示す指標で,定常状態の運転では,ブロー水量を調整することで管理することができる。
⑶ ブロー水を減らし,濃縮倍数を大きくして運転することで,補給水量を減らすことができ,腐食やスケールの発生リスクは上がる
⑷ スケールとは,水に溶存していた成分が濃縮や形態変化により熱交換器や配管に付着したもので,炭酸カルシウムが析出する事例が多い。
⑸ 配管系の腐食には塩化物イオン濃度の影響が大きい。

 

コークス炉ガス精製排水(安水)の処理フロー

コークス炉ガス精製排水(安水)の処理フロー
 

鉄鋼業からの排水処理

鉄鋼業におけるCODに係る総量規制基準
水量総量規制で、鉄鋼業に対する排水の規制はCOD、窒素、りんが総量規制としの対象になっている。

 

業種の区分COD
コークス製造業180~190
製鋼圧延を行う高炉による製鉄業(コークス炉あり)40~50
製鋼圧延を行う高炉による製鉄業(コークス炉なし)10~20
電気炉による製鋼・製鋼圧延業180~190


製鉄所における排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年 第7問より)

⑴ コークス炉ガス精製排水は,有機化合物や無機化合物がトラップされて排出
⑵ 熱間圧延工程排水のうち直接冷却水における処理対象は,酸化鉄のスケールの SS,潤滑油や圧延油のノルマルヘキサン抽出物質及び水温である。
⑶ 熱間圧延工程排水のうち間接冷却水は,基本的には冷却塔による水温低下処理のみを行うが,循環水の一部を砂ろ過することにより循環水中の SS を管理する。
⑷ 表面処理排水のうちクロメート排水は,クロム(Ⅵ)を還元剤によって還元した後に pH を 8 ~ 9 程度に調整して沈殿除去を行う。
⑸ 表面処理排水のうち酸洗排水と亜鉛メッキ排水は,pH を 8.5 ~ 10 程度に調整して溶解していた鉄と亜鉛を不溶物として析出させる。

鉄鋼業からの排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年 第7問より)
⑴ コークス製造業に対する COD に係る総量規制基準の C 値は,第 1 次に比べて第 8 次では値が小さくなっている。
⑵ コークス製造業に対する COD に係る総量規制基準の C 値は,第 1 次から第 8 次までを通して,電気炉による製鋼・製鋼圧延業に対する値よりも小さい大きい。
⑶ 製鉄所からの排水は,圧延加工,めっき及び化成処理などからの工程排水,排ガス洗浄及び湿式集じん機などからの汚濁排水,炉体及びロールなどの間接冷却からの排水からなる。
⑷ 廃安水の主な汚染物質は,フェノール,アンモニア,シアン,コークス粉である。
⑸ 製鉄所では水使用の合理化が進んでおり,これまでに,用水循環率が 90 %を超える報告例もある。

スケールとは
空気中または他の酸化雰囲気中で加熱したとき表面に生じる酸化物の被膜

 

製油所の排水

製油所におけるプロセス排水の処理フロー(R3年第9問より)

 

製油所からの排水処理フロー(R2年第8問より)

鉄鋼業からの排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R1年 第8問より)

⑴ 原油は常圧蒸留装置により,沸点の違いを利用してガス,ナフサ,灯油,軽油,重質軽油及び常圧残油に分けられる。
⑵ 大気汚染対策として燃料の低硫黄化が求められ,水素化脱硫が行われている。
⑶ 製油所からの排水に特徴的に含まれるものとして,油分,フェノール,硫化物などがある。
⑷ 排水中の油分は,重力分離による API オイルセパレーターの後段に活性汚泥プロセスを用意して、フェノールなどを除去するとともに油分をほぼ完全に除去します。
⑸ 排水中の BOD,COD 及びフェノールは,一般に好気生物を利用する活性汚泥法により処理することで除去する。

 

クロメート処理

クロメート処理とは、
六価のクロム酸を主成分とする処理液で表面処理する方法。
亜鉛やアルミ、マグネシウムにする場合これらの金属がクロム酸で溶解することで、六価クロムの
一部が還元され三価の水和クロムによる無機高分子皮膜が形成し、残存する六価クロムによる効果
と相まって耐食性を向上させます。

 

鉄鋼業で,鋼板の表面処理として行われるクロメート工程からの排水に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年 第8問より)

⑴ クロメート工程からは濃厚廃液とリンス排水が排出される。
⑵ クロメート工程で主に用いられる六価クロムは有害で,しかも酸性でもアルカリ性でも沈殿を形成しない。
⑶ クロメート排水は還元槽において,亜硫酸水素ナトリウムあるいは硫酸鉄(Ⅱ)などを用いてクロムを還元する。
⑷ クロメート排水の還元反応で生じた三価クロムは,pH を 9~10程度に調整して,水酸化クロムとして沈殿除去する。
⑸ クロメート排水の還元反応では,一般に酸化還元電位計(ORP 計)を用いて還元剤の注入量を調整するが,還元剤として鉄塩を用いる場合は,液中の溶存酸素濃度を指標にすることもできる。

 

紙・パルプの排水

リグニンとは
木質素ともいう。維管束植物の道管、仮道管などの木部に多量にみいだされる高分子物質。とくに木材中には乾物量の20~30%に達する量が含まれる。多くの溶媒に不溶のため、パルプ製造の際には亜硫酸処理によってリグニンを可溶化して除去する。
黒液とは
木材パルプを作るときに化学的に分解・分離した際に発生する黒ないし褐色の液体である。
燃える物質です。

 

製紙工場における排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R1年 第9問より)
⑴ 蒸解工程で用いられる白液には水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムが含まれる。
⑵ 蒸解工程の後,洗浄工程でリグニンを取り除いた残りの液を黒液という。
リグニンやそれが変質したもの、製紙工程で使った薬剤、その他樹脂などが混じりあったものを濃縮したものが黒液
⑶ 黒液に含まれる無機物はカセイ化工程を経て再生利用される。
⑷ パルプ製造工程における節水対策として,黒液濃縮工程から発生する凝縮水の利用などがあげられる。
⑸ 白水回収装置では,気泡による浮上分離を用いて原料の回収が行われる。

製紙工場における水使用や排出負荷等の合理化に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年 第9問より)
⑴ 蒸解工程で生じた黒液の濃縮工程から発生する水蒸気の凝縮水は,洗浄工程で利用される。
⑵ 濃縮された黒液は回収ボイラーで燃焼され,大きなエネルギー源となるだけでなく,炉底から排出された溶融無機物は,漂白薬品蒸解薬品として再生利用される。
⑶ 蒸解を均一にし,パルプの洗浄や酸素脱リグニンをより効果的にすることで,漂白工程へのリグニンなどの不純物の持ち込みを減らせば,漂白薬品の使用量や排水の汚濁負荷を減らすことができる。
⑷ パルプを低濃度のスラリーにしてワイヤーパートで脱水する抄紙工程では,発生したろ水(白水)が循環利用される他,余分な白水は白水回収装置に送られ,浮上分離等により抄紙原料が分離回収される。
⑸ 白水回収装置で原料回収後の水は,抄紙工程の各種希釈水として利用できる。

漂白薬品
漂白、つまり 色 などを取り除いて白くするために用いる薬剤の総称
蒸解
パルプ原料である木材チップに蒸解液を加え,加熱,加圧下でおもにリグニンを溶解,除去する操作をいう.

 

食品の排水

活性汚泥,UASB,凝集沈殿+砂ろ過+活性炭からなる下図のビール工場排水の処理フロー
ビール工場の排水のBODは400~1200㎎/Ⅼ程度、上向流式嫌気汚泥床(UASB)が開発され
食品関連工場の中・高濃度有機物排水処理に利用されている。

上向流式嫌気汚泥床(UASB)とは
嫌気性微生物の自己集塊作用を利用して、活性の高い菌体を沈降性に優れたグラニュール(粒状汚泥:granule)として反応槽に保持する方法
このメリットは活性汚泥処理の負荷を低減させ、曝気動力を約1/3、余剰汚泥発生量を1/2に低減できること。
副生成物としてのメタンガスはエネルギーとして利用される。

ビール工場の排水や排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R1年 第10問より)
⑴ ビール工場の主な排水として,醸造系の排水と容器 充塡工程の排水があり,有機物濃度がより高いのは前者である。
⑵ ビール工場の総合排水は生物処理可能なので,活性汚泥法により処理できる。
⑶ 上向流式嫌気汚泥床(UASB)では,沈降性に優れたグラニュールと呼ばれる嫌気性菌の塊を自己形成させることで,従来の嫌気性処理の欠点である長い処理日数を大幅に短縮することができる。
⑷ ビール工場に UASB を導入する場合,既存の活性汚泥処理の前に UASB 処理を行う,二段処理とするのが普通である。
⑸ 一般にビール工場の排水を UASB と活性汚泥の二段処理をすれば,活性汚泥法単独処理に比べ曝気動力を削減できるが,余剰汚泥の発生量は減少する

食料品製造業における排水処理に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年 第10問より)
⑴ 水質汚濁防止法における特定施設として,原料処理施設,洗浄施設,湯煮施設などがある。
⑵ 日平均排水量 50 m3/日未満の小規模事業場も都道府県条例により排水基準が定められることがある。
⑶ 水質変動が大きい清涼飲料工場からの総合排水に対して,ラグーン方式を用いることで排水処理の負荷変動を緩和することが可能である。
⑷ ビール工場の排水処理において,活性汚泥法の前段に UASB を導入することで,曝気動力と汚泥発生量を低減することができる。
⑸ 清涼飲料工場における排水中の有機物のほとんどは嫌気的分解が困難なため,UASB は適用できない。嫌気性菌の塊を自己形成する。