08.汚水処理特論 Word検索

 

嫌気処理

処理対象の排水(廃水)などを酸素が少ない嫌気状態を保ち、その条件で活動できる嫌気性微生物に汚濁物質を分解させ、主にメタン、二酸化炭素(CO2)などに分解する廃水処理技術のこと。
・高濃度で大量に発生する有機性排水の処理を行う。
・アンモニア、水素、硫化水素などが発生する。
嫌気処理法の種類
・嫌気ろ床
・嫌気流動床
・上向流式嫌気汚泥床(高負荷処理が可能)
・二相発酵槽システム

他には
一方、排水処理技術としては、酸素が豊富(好気処理)な条件で好気性微生物を用いて処理する活性汚泥法も多用されている。

汚水処理特論 R1年19問より
・嫌気処理装置は一般に密閉された構造のため内部を見ることができず、処理水又は処理装置内の水質を監視しながら正常な状態を維持する。
・処理水は概して黒く濁っています、処理水の濁度を監視することによって、汚泥の流出がないよう管理する。
・pHの低下は有機酸の蓄積を予測させるため、排水の流入停止などの対応をとる。
・ガス発生量の低下は、メタン生成菌の活性低下が予想されるため、排水の流入停止などの対応をとる。
・高温消化では排水の流入が停止し、負荷のない状態が続くと急速に生物活性が低下してしまう。

汚水処理特論 R2年15問より
嫌気処理法に関する記述として,正しいものはどれか。

⑴ 発酵槽の攪拌方式には,表面攪拌式と水中攪拌式機械攪拌方式とガス攪拌方式がある。
⑵ メタン発酵法における高温発酵法の最適温度は,36 ~ 38 ℃程度53~55℃程度である。
⑶ メタン発酵の中間生成物である低級脂肪酸は,高濃度ではメタン生成の阻害の原因となる。
⑷ メタン発酵槽に流入する原水中に高濃度の糖類タンパク質が含まれていると,その分解により過剰のアンモニアが生成し,メタン生成の阻害となる。
⑸ UASB では,担体を投入し,上向流による排水の一過式流入,発生ガスの上昇による穏やかな攪拌下で,担体に付着した担体は使用しない嫌気性微生物によって処理を行う。

担体とは
・非常に微量の放射性元素の分離を容易にするために加えるもので,化学的性質が等しいか,あるいは類似した物質。同位体担体と非同位体担体がある。
・自身は触媒作用をもたず,触媒の支持物あるいは希釈物となる物質をいう。
・けいそう土,軽石,シリカゲル,アルミナ,活性炭などが代表的

 

メタン発酵

・メタン発酵は、酸素の存在しない嫌気性条件下で働く嫌気性細菌により、下水汚泥、家畜の糞尿や生ごみ・廃油などの有機廃棄物中の有機物を分解し、メタンと二酸化炭素から成るバイオガスと、消化液(発酵残渣)に分解。

・メタン発酵法
中温発酵法(36℃~38℃)と高温発酵法(53℃~55℃)が最適温度になっている

好気処理と比べ
・酸素供給のための曝気が不要なため,動力が少なくてすむ
・発生するメタンガスがエネルギーに利用される
・余剰汚泥の発生量が少ない
・微生物の増殖速度が小さく、窒素、リンなどの栄養塩の添加量が少ない

汚水処理特論 R2年15問
好気処理の活性汚泥法と嫌気処理のメタン発酵法(二方式)の特徴を表に示した。この表中の A ~ C に入るべき数値の組合せとして,最も適切なものはどれか。



 

アナモックスプロセス

アナモックス反応を利用して排水からの窒素除去を行うプロセスの総称

 

アナモックス反応では,嫌気性の独立栄養細菌により,アンモニア態窒素及び亜硝酸態窒素窒素ガスへ変換され,その過程で水素イオンが消費され,少量の硝酸態窒素が生成する。

汚水処理特論 R2年16問
アナモックスプロセスに関する記述として,誤っているものはどれか。

⑴ 嫌気性条件下における生物学的窒素変換反応である。
⑵ 有機物を必要としない独立栄養型のプロセスである。
⑶ 消費される窒素は全量が窒素ガスへ変換される少量の硝酸態窒素も生じる。
⑷ アンモニア態窒素の約半量を亜硝酸態窒素に酸化させればよいので,従来の硝化脱窒素法に比べて必要酸素量が小さい。
⑸ 従来の硝化脱窒素法に比べて汚泥発生量が小さい。

 

生物的硝化脱窒素法

微生物の働きを利用して排水中の窒素化合物を除去する方法
生物的硝化脱窒素法では微生物の作用により窒素化合物を酸化あるいは還元させ、窒素ガス(N2)を生成して大気へ放出します。

 

汚水処理特論 R3年16問より
生物的硝化脱窒素法に関する記述として,誤っているものはどれか。
⑴ アンモニアから亜硝酸態窒素への反応では Nitrosomonas sp. が関与する。
⑵ 亜硝酸態窒素から硝酸態窒素への反応では酸素が消費される。
⑶ アンモニアから硝酸態窒素への反応では水素供与体を必要としない。
⑷ 亜硝酸態窒素から窒素への反応では通性嫌気性細菌が関与する。
⑸ 硝酸態窒素から窒素への反応ではアルカリが生成される。

汚水処理特論 R1年17問より
生物的硝化脱窒素法に関する記述として,誤っているものはどれか。
⑴ 硝化工程に関与する細菌は,独立栄養細菌である。
⑵ 脱窒素に関与する細菌は,通性嫌気性細菌である。
⑶ 循環式硝化脱窒素法では,沈殿槽硝化槽から硝化液が循環される。
⑷ 硝化菌を処理系内に維持するために,SRT は 7 ~ 10 日以上に維持される。
⑸ 硝化菌の増殖速度は,BOD 酸化菌に比べて温度により大きく影響を受ける。

 

BODとは

生物化学的酸素要求量(水中の有機物の代表的な汚染指標【生活環境項目】)
・BODを効率的に酸化分解するのに必要な栄養塩類の割合は
   BOD: N : P =100:50:1
硝化細菌の増殖速度はBOD物質酸化に比べて小さい

 

生物が水中にある有機物を分解するのに必要とする酸素の量(mg/l)を表しています。
河川の汚染度が進むほど、この値は高くなります。
BODが高いということは、溶存酸素(水中に溶解している酸素ガスのこと。河川の自浄作用や魚類をはじめとする水生生物の生活には不可欠。)が欠乏しやすいことを意味します。

BOD容積負荷とは
1日あたりに処理できる量のこと。単位を合わすことが重要です
BOD容積負荷(Kg/(m・日))=流入BOD量(Kg/日)/曝気層容量(m

単位の換算:1000L=1t=1㎥、1000mg=1g、1g/L=1kg/㎥

BOD値のめやす)
BOD10mg/l以上では、河川中の酸素が消費され、悪臭の発生など嫌気性分解に伴う障害が現れ始めます。 上水道水源としては、BOD3mg/lを越えると、一般の浄水処理方法では処理が困難となるとされています。
国土交通省 淀川河川事務所のHPより

 

BOD容積負荷

BOD容積負荷とは
活性汚泥が、容積1mあたり、1日に処理するBOD量のことである。
BOD容積負荷の計算式は、

 


単位は、 「kg/m3・D」 である。
一般的な排水処理設備におけるBOD容積負荷は、0.5〜1.5kg/m3・D 程度である。

汚水処理特論 R1年12問より
水量 1000 m3/日,BOD 200 mg/L の排水を膜分離活性汚泥法(曝ばっ槽・膜分離槽一体方式)で汚泥負荷 0.25 kg BOD/(kg MLSS・日)で運転している。工場増設により排水量が 1500 m3/日,BOD 200 mg/L になる見通しになり,曝気槽の活性汚泥濃度を増加させ運転したい。汚泥負荷を同じ条件で運転するためには,汚泥濃度 MLSS(mg/L)をいくらにすればよいか。なお,曝気槽の容積は 200 m3 とする。

MLSS:MLSS濃度 [mg/L]を求める

L:BOD汚泥負荷 [kgBOD/(kgMLSS・日)]=0.25
BOD:BOD濃度 [mg/L]=200
Q:流入水量 [m3/日]=1500
V:曝気槽の容量 [m3]=200

0.25=汚泥濃度×200÷(200×1500)
汚泥濃度×200=(200×1500)÷0.25=1200,000
汚泥濃度=1200,000÷200=6,000

汚水処理特論 R2年11問より
BOD 濃度 400 mg/L,流量 200 m3/日の排水 A 系と,BOD 濃度 160 mg/L,流量 500 m3/日の排水 B 系とが合流し,沈殿池で SS 性 BOD を自然沈降させたところ BOD 除去率は 30 %であった。沈殿池の越流水を活性汚泥法で処理するとき,曝気ばっき槽での BOD 容積負荷(kg/(m3・日))を求めよ。なお曝気槽の容積は 400 m3 とする。

A系とB系の沈殿池へのBOD量を求める
A系(400×200)+B系(160 ×500)
=160000(g/日)
=160(Kg/日)
沈殿池でBOD除去率が30%であれば残る70%が曝気槽への流入量になります
=160(Kg/日)×0.7(70%)
=112(Kg/日)
曝気槽の容積は 400 m3なので容積負荷は
400/112=0.28(Kg/(m・日))

汚水処理特論 R3年12問より
BOD 300 mg/L,流量 200 m3/日の排水を,曝気ばっき槽容積 120 m3,MLSS 濃度2000 mg/L の活性汚泥法で処理していたところ,生産を拡張させ,同じ濃度の排水をさらに 100 m3/日増加させて処理することとなった。曝気槽容積を 30 m3 増加させ,BOD 汚泥負荷を変化させずに運転する場合,MLSS 濃度(mg/L)として適切なものはどれか。

①初期条件での計算
L:BOD汚泥負荷=2000
BOD:BOD濃度=300
Q:流入水量=200
V:曝気槽の容量=120
MLSS:MLSS濃度=2000

MLSS 濃度(mg/L)=(300×200)÷(2000×120)
          =60000÷240000=0.25

➁増加した後のMLSS 濃度(mg/L)

L:BOD汚泥負荷=0.25
BOD:BOD濃度=300
Q:流入水量=200+100
V:曝気槽の容量=120+30

0.25=(300×300)÷(MLSS濃度×150)
汚泥濃度×150=(300×300)÷0.25=360000
汚泥濃度=360000÷150=2400

汚水処理特論 R3年13問より
ある工場に 2 系統の排水があり,これらを合わせて活性汚泥で処理している。2 系 統 の う ち, 一 方 の 排 水 は BOD 200 mg/L で, 水 量 が 250 m3/日, 他 方 はBOD 500 mg/L で,水量が 80 m3/日である。また,曝気槽の容積は 100 m3,処理後の水質は BOD 20 mg/L,及び BOD 汚泥負荷は 0.4 kg BOD/(kg MLSS・日)である。この活性汚泥の曝気槽の MLSS 濃度(mg/L)はいくらか。
BOD量(BOD濃度×流入水量)
系統1のBOD量=BOD濃度200×流入水量250=50000
系統2のBOD量=BOD濃度500×流入水量80=40000
曝気層に流入するBOD量は90000となる


0.4=(90000)÷(MLSS濃度×100)
汚泥濃度×100=(90000)÷0.4=225000
汚泥濃度=225000÷100=2250   

 
 

りんの除去

生物的脱りん法
りんだけを除去する嫌気・好気活性汚泥法。
(嫌気槽で原水と返送汚泥を接触させ、汚泥中のりんが有機物によって混合液中に放出される、後段の好気槽で放出されたりん以上のりんを取り込み、余剰汚泥として系外に放出する)
窒素とりんを同時に除去する嫌気・無酸素・好気法。
(嫌気槽でりんを放出させ、無酸素槽で脱窒し、好気層でりんを取り込む)

汚水処理特論 R2年17問より
りんの除去に関する記述として,誤っているものはどれか。

⑴ 無機凝集剤による凝集分離処理でりんを除去できる。
⑵ HAP 法は,排水にカルシウムを添加し,アルカリ剤による pH 調整を行い,ヒドロキシアパタイトとして除去するものである。
⑶ MAP 法は,アンモニアの存在下でマグネシウム剤を添加し,アルカリ剤による pH 調整を行い,りん酸マグネシウムアンモニウムとして除去するものである。
⑷ 生物的脱りん法は,活性汚泥によるりんの過剰摂取現象を利用するものである。
⑸ 嫌気・無酸素・好気法では,無酸素槽でりんを放出させた後,好気槽嫌気槽でりんを取り込むものである。

 

ORP(酸化還元電位)

 ORP(酸化還元電位)は、
酸化(Oxidation)と還元(Reduction)が起こる際に電子の移動が生じた電位(potential)のことで、酸化力と還元力の指標となるものです。単位は電圧(mV)です。

 

酸化還元反応における電位を表す式はネルンストの式です

E0:測定系の基準電位
R:気体定数
T:絶対温度
F:ファラデー定数
n:反応に関与する電子の数

酸化力・還元力の尺度で酸化・還元に関連する全てのイオンを対象として定義づけられているため必ずしも水溶性である必要はない。
又水中での酸化性物質(溶存酸素や、消毒に用いられる次亜塩素酸ナトリウム、3価の鉄イオンなど)と、還元性物質(2価の鉄イオン、硫化物、有機物など)の物質量のバランスで決まり、
プラスの数値が高いほど「酸化力の強い」水、マイナスの数値が大きいほど「還元力が強い」水であるといえます。

汚水処理特論 R2年18問より
酸化還元電位計(ORP計)は何を使っても校正することができません。
・ORP 計によって酸化剤又は還元剤を所定電位になるように注入する。
・ORP 計の電極面の汚れを清掃し,硫酸鉄(Ⅱ)溶液などで指示値を確認する。
・COD の除去に次亜塩素酸ナトリウムあるいはオゾンを用いて化学的酸化をする場合は,通常 ORP 制御は行わない。
・着色排水の脱色では,酸化剤の添加量はあらかじめ実験によって決定する。

 

活性汚泥処理装置の維持管理

管理条件として
曝気層内で微生物の代謝を維持し、フロック(大きな塊)を形成する。
・沈殿池での活性汚泥が沈降分離できること

 

そのために
・排水中に窒素やりんなどの栄養塩類が不足している場合は、
質量比で、BOD:N:P=100:5:1程度になるように栄養塩類を添加する
曝気槽への酸素供給(溶存酸素濃度を1mg/L以上とする)
・BOD負荷(沈殿池での汚泥の沈降性を保つ)
窒素除去(溶存酸素濃度を2mg/L以上とする)

 

凝集沈殿処理

排水中のコロイド状物質,浮遊物質を分離するために凝集剤を加えて沈殿させる方法。
コロイド状の微小な粒子は水中で沈殿しないので,塩化第一鉄,硫酸アルミニウムあるいはポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を加えて大粒のフロック(大きな塊)をつくらせて沈降させる。
この方法による水処理は,ほかの沈殿法に比べてフロック(大きな塊)の形成や沈殿速度が速く,設備は比較的に小型となる。

凝集沈殿法に関する記述として,誤っているものはどれか。(R1年第2問より)

⑴ 陰イオン性ポリマー陽イオン性ポリマーによる凝集効果は,主として負に帯電している懸濁粒子の表面電荷の中和による。
⑵ 非イオン性のポリマーは無機凝集剤と併用されることが多く,粒子間に吸着架橋してフロックの粗大化に効果がある。
⑶ 凝集に適した pH は,原水の性状や除去対象物によって異なり,目的に合った適切な pH で使用する必要がある。
⑷ 凝集剤の選定に当たっては,ジャーテストなどの凝集試験を行う必要がある。
⑸ 凝集沈殿法は,排水の清澄化だけでなく,COD,色,りん酸塩などの除去にも用いられる。

 

凝集分離とは

コロイド粒子が主な処理対象
大きさが1μm以下の粒子はコロイド粒子と呼ばれ、機械的な分離ができないため、凝集分離によって処理されます。
さらに、粒子径が0.001μm以下の粒子は分子状のため、化学的に一度析出させた後に凝集分離されます。
凝集によってできた粗大粒子をフロックと呼び、この凝集を目的に添加する薬品を凝集剤と呼びます。
無機凝集剤の代表的なものには,硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム,硫酸鉄(Ⅱ),塩化鉄(Ⅲ)などがある。

 

凝集分離に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年第3問より)
⑴ 水に懸濁している粒子のうち,大きさが 0.1 µm10 µm 程度以上のものは凝集法を用いなくても普通沈殿や砂ろ過法で分離することができる。
⑵ ジャーテストでは,薬品添加後 1 ~ 5 分たったら,攪拌羽根の回転数を下げる。
⑶ 凝集剤の添加によって表面電荷を電気的に中和された粒子は互いに凝集してフロックを形成する。このとき凝集の速度は,単位体積中の粒子の個数が大きくなるほど増加する。
⑷ 水平流形の凝集沈殿装置は,基本的にはフラッシュミキサー,フロキュレーターと沈殿池から構成されている。
⑸ フロック形成の場において,径の大きい既成フロックを懸濁させておけば,粒子の接触による凝集反応の速度を上げることができる。

凝集分離に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第5問より)

⑴ 水に懸濁して安定な分散状態を保っている微粒子が凝集剤などによって凝集して生じる粗大粒子をコロイドフロックという。
⑵ 水の中の安定な微粒子分散系に,反対荷電を持つ微粒子やイオンを添加して荷電を中和すると凝集が起こる。
⑶ 無機凝集剤の代表的なものには,硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム,硫酸鉄(Ⅱ),塩化鉄(Ⅲ)などがある。
⑷ 凝集剤の添加量を原水の水質分析値から推定できない場合は,ジャーテストによって実験的に決定する。
⑸ 攪拌が強すぎると,凝集によって生成した凝集体が破壊されて再分散してしまうので,ある凝集反応系に特有の最適攪拌条件が存在する。

 

フレーム原子吸光法

原子吸光法
基底状態の原子に特定波長光を通過させると光を吸収する現象を利用し、元素濃度を測定するもの。
フレーム原子吸光法
試料溶液をアセチレン/空気などをフレーム中に噴霧して原子蒸気を生成し、その中に光を透過させ、その吸光度(ある物体を光が通った際に強度がどの程度弱まるかを示す無次元量である。)を測定する。 NaやKなどを高精度で測定するのに適している。 

汚水処理特論 R1年20問
フレーム原子吸光法に関する記述中,下線を付した箇所のうち,誤っているものはどれか。
試料中に含まれる分析対象元素をフレーム(炎)中で(1)励起状態基底状態の原子とし,その(2)原子蒸気層に原子の(3)共鳴線を透過させたときの吸光度を測定することによって濃度を求める。測定用の光源には(4)中空陰極ランプ(ホロカソードランプ)が,紫外部全域にわたるバックグラウンド補正用の光源には(5)重水素ランプが主に用いられる。

励起状態とは
量子力学的な系について、基底状態(エネルギー値のいちばん低い状態)より高いエネルギーの状態をいう。

 

溶存酸素の測定

溶存酸素量(ようぞんさんそりょう:DO)
採取された水に、どれだけの濃度で酸素が溶存しているかということである。水域における水質の指標として用いられ、溶存酸素量が高いほど、水質は良好とされる。溶解酸素量(ようかいさんそりょう)とも呼ばれる。単位は、従来は、ppmが主に用いられていたが、最近では、mg/L が多用されている。

 

溶存酸素の測定は以下の4種類
・よう素滴定法(ウィンクラー-アジ化ナトリウム変法)
・ミラー変法
・隔膜電極法(溶存酸素電極による測定法)
・光学式センサ法

隔膜電極法(溶存酸素電極による測定法)
長所・・・サンプルの色や濁りなどの影響を受けない
現場での測定が可能である、測定操作が簡単である
短所・・・定期的なメンテナンスや校正作業が必要である
(隔膜、電解液の交換・電極の研磨)、サンプルの流速に影響を受ける、妨害物質がある
(H2S,SO2,ハロゲンガスなど)

 

pH標準液

上質の共栓ポリエチレン瓶又は共栓ほうけい酸ガラス瓶に密閉して保存。
長期間の保存によってpH値が変化する(注)ことがありますので、調製後長期にわたるものは新しく調製した標準液と比較して、pHの値が同一であることを確認した上で使用しなければなりません。
一度大気中に開放放置されたpH標準液は使用してはいけません。
炭酸塩標準液は空気中の二酸化炭素を吸収し変質しやすい。

 

PH標準液の種類
しゅう酸塩標準液 pH1
フタル酸塩標準液 pH4
中性りん酸塩標準液 pH6
りん酸塩標準液 pH7

ほう酸塩標準液 pH9
炭酸塩標準液 pH10

 

ノルマルヘキサン抽出物質

特徴として
・サンプルの保存方法は塩酸でpH 4以下の弱酸性
・検定に用いられる方法は「抽出法」
約80℃でヘキサンを揮散
・主に鉱物油動植物油脂類が抽出され、他にもヘキサンによって抽出され揮散しにくい物質も含まれる
ヘキサンは有機溶媒によって抽出される不揮発性物質の総称で、水中に含まれる油分の指標です。
 

ICP発光分光分析法

高周波誘導電流によって生じる高温(6000~10000 ℃)のアルゴンプラズマ中に試料を噴霧し,
試料に含まれる元素が熱エネルギーによって励起されて発する光を検出して分析する。生産管理から環境管理,水質管理まで幅広く利用されている。

 

汚水処理特論 R1年22問より
ICP 発光分光分析法では,誘導コイル高周波電流を流し電磁誘導によって生成する高温の誘導結合プラズマの中に試料を噴霧し,励起状態の原子から発する個々の波長の発光強度を測定する。

励起状態とは
量子力学的な系について、基底状態(エネルギー値のいちばん低い状態)より高いエネルギーの状態をいう。

 

流れ分析法

流れ分析法は,フローインジェクション分析(FIA)法と連続流れ分析(CFA)法に大別される。

 

いずれも水試料,試薬を細管中に流し,反応操作などを行った後,検出部で分析成分を検出して定量する方法である。
連続流れ分析(CFA)法は,細管内の試料又は試薬の流れの中に気体を導入して分節する。分節を行う主な理由は,管の中の流れが渦流又は乱流となり,試料や試薬がよく混合されるからである。

 

紫外線吸光光度法

紫外線吸光光度法では,試料にペルオキソ二硫酸カリウムのアルカリ性溶液を加え,約 120 ℃に加熱して窒素化合物を硝酸イオンに変えるとともに共存する有機物を分解する。この溶液のpHを2~3とした後,波長220 nmの吸光度から硝酸イオン濃度を求め,窒素濃度に換算する
 

濁度計測器

光の透過又は散乱又はその両者を利用したもので、測定液中を通る光が、吸収、散乱又は屈折などにより、その強さが変化するのを測定する原理にもとづいている。

 

測定方式長所短所
透過光方式高濁度の測定が可能・窓の汚れの影響を受ける
・試料の色、気泡の影響を受ける
散乱光方式光を入射させ、その直角方向で、液中粒子による散乱光を測定する・窓の汚れの影響を受ける
・試料の色、気泡の影響を受ける
透過光散乱光方式試料の色の影響が少ない
極低濁度の測定が可能
・窓の汚れの影響を受ける
・試料の気泡の影響を受ける
表面散乱光方式窓の汚れの問題がない
同一液槽で広範囲な測定が可能
・試料の色、気泡の影響を受ける
・応答がややにぶい
 

全りんの検定方法

全りんはモリブデン青吸光光度法で分析します。

 

ペルオキソ二硫酸カリウム分解法では、試料にペルオキソ二硫酸カリウムを加え、120℃の高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)中で加熱して有機物などを分解し、生成したりん酸イオンをモリブデン青吸光光度法で定量し、これをりんの濃度で表す。

 

TOC 計

水中の有機物に含まれている炭素を直接測定する。
前処理や複数の手順が必要なBODCODに比べて短時間で測定値が得られます。
2チャンネル方式と1チャンネル方式があります。

 

1 チャンネル方式は自動計測にも使用される。試料に酸を加えてpH2以下とし,これにパージガスを通気して無機体炭素を除去する。この試料を燃焼し,生成した二酸化炭素を非分散型赤外線ガス分析計で測定する
2チャンネル方式による測定では、全炭素(TC)から全無機体炭素(TIC)を減じてTOCを得る。

 

ジャーテスト

ジャーテストとは
⽇々変わる⽔質に対してどれくらいの薬品(凝集剤)を ⼊れると適正なのかを⽐較し調べる試験です。
1)川から取った原⽔に薬品を⼊れる
①原⽔を1リットル採⽔する。 ⽐較する試験のためサンプル は何個か⽤意をする。
②薬品(凝集剤)を注⼊する。

 

凝集分離に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年第3問より)
⑵ ジャーテストでは,薬品添加後 1 ~ 5 分たったら,攪拌羽根の回転数を下げる。
凝集分離に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第5問より)
⑷ 凝集剤の添加量を原水の水質分析値から推定できない場合は,ジャーテストによって実験的に決定する。

 

向流多段洗浄

抽出操作において,図に示すように数個の抽出槽を連続して用い,第1槽に原料を,第n槽に抽出剤を入れて,第1槽から最終抽出液を,第n槽から最終抽残液を取り出す,原料と抽出剤を向流させる方式である.

 

この方法により,少ない量の抽出剤で効率よく抽出を行うことができる.(コトバンクより)

向流多段洗浄 計算

  • a0:原料に含まれる不純物の量
  • an:製品に含まれる不純物の量
  • v:製品が各段で持ち出す水量
  • V:洗浄水量
  • r:V/v (洗浄水量Vと製品が各段で持ち出す水量vの比)


(R2年第2問より)
3 段の向流多段洗浄において,製品が各段で持ち出す水量(v)を半減させて,洗浄水量(V)との比(V/v)を 5 から 10 に上げることにより,第 3 段の洗浄槽を出る製品中の不純物質の量を,およそ何分の 1 に減少させることができるか。

洗浄水量(V)が5の不純物質の量

洗浄水量(V)が10の不純物質の量


0.0064
0.0009=1:7

 

ストークスの式

ストークスの式とは(重要公式)
主に小さな粒子が流体中を沈降する際の終端速度

 


直径 d = 0.01 cm,密度 ts = 1.2 g/cm3 の懸濁粒子の最も近い沈降速度 v(cm/s)はいくらか。(R2年第3問より)
例題のように数字を当てはめると
v=(980×(1.2-1.0)×0.012)/18×0.001=0.0196/0.18≒0.109

 

 

シックナー

固体濃度の低い懸濁液(スラリー)を濃厚な固形物(スラッジ)と清澄な上澄み液に分離する重力式の連続沈降濃縮装置であり、ろ過、脱水、乾燥などの前処理操作に用いられる。

 

連続シックナーに関する記述中,ア~ウの中に挿入すべき語句の組合せとして,正しいものはどれか。(R3年第2問より)
連続シックナーの内部で,汚泥濃度 C,表面積 A の水平面を考え,重力によ る沈降速度を R とする。越流での汚泥濃度 Ce = 0,排泥量を Qu とした場合, この水平面を通って下向きに移動する質量沈降速度 G は, ア C(R+Qu/A)  となる。 排泥量が一定であれば,給泥濃度 Cf から排泥濃度 Cu に至るまでのある濃度 CL において G がイ 最大 になる。この G の値から連続シックナーのウ 必要水深 が求まる。

 

金属イオンを含む排水

金属イオンを含む排水は一般に酸性で,アルカリを添加して pH を上げることにより金属を水酸化物として沈殿させることができる。

 

金属イオンを含む排水の処理(R1年第4問より)
pH = -log[H+]で示される。
logとは、対数(ロガリズム)のことで、
x=10nのときnをxの対数といい、n=logxのようにあらわします。
log2=0.3010は、2=100.3010ということです。

金属イオンを含む排水の処理(R1年第5問より)
・ 2 価の鉄は,pH11 付近でほぼ完全に除去される。
・ 3 価の鉄は,pH4 付近でほぼ完全に除去される。
・ 銅は,pH9 付近でほぼ完全に除去される。
・ 亜鉛は,pH9 ~ 10 の範囲でほぼ完全に除去される。
・ アルミニウムは,pH6 以上でほぼ完全に除去されない。

工場排水中に含まれる重金属(密度が比較的大きな金属で、一般的に4.0g/cm3以上のものを指す。)は毒性が強いものが多く、それらは微量であっても繰り返し摂取すると体内に蓄積されて中毒症状を起こします。水俣病は有機水銀毒、イタイイタイ病はカドミウムが原因となる。

 

オゾン処理

オゾン(O3)の強い酸化力を利用して、排水中の汚濁物質などを酸化分解する高度処理方法。
オゾンは、3個の酸素原子(O)から成る空気より重い気体で、反応性の高いラジカル(自由に動き回る電子を持つ原子や分子の構造)を容易に発生し、強い酸化作用をもつ。
酸素原子で構成されるオゾンは無機塩濃度を増加させることがない。
また、処理に伴う濃縮廃水や汚泥の発生がない

 

オゾン処理に関する(R3年第5問より)
⑶ オゾン発生機に供給する原料として加湿空気乾燥空気が用いられる。
オゾン処理に関する(R1年第6問より)
⑶ 排水の高度処理用として,窒素,りんの除去に用いられる。
窒素,りんの除去は生物処理法などに用いられます。

オゾンと塩素の比較
①塩素より酸化力が強い
➁オゾン発生器と電力があればどこでもオゾンを発生できるので、貯蔵や輸送の心配がない
 オゾン発生機は,高圧無声放電法などを用いている。 
③オゾンの発生量は、電力の調整により自由に制御できる
④水中では短時間に分解し残留性がない
⑤塩素のように水中に塩分(塩化物イオン)を増加させることはない
⑥塩素の場合、水中の有機物と化合して有機塩素化合物を生じる恐れが指摘されているが、オゾンにはその心配がない
⑦原料としての空気の湿度は,露点 -50 ℃以下が望ましい。

 

酸化と還元

酸化とは、酸素と化合、ある物質から水素を奪う、または電子を奪うこと
還元とは、酸素を失うこと、水素と結合する、電子を得る反応のこと

酸化還元電位とは
酸化還元反応系における電子のやり取りの際に発生する電位(正しくは電極電位)のことである。物質の電子の放出しやすさ、あるいは受け取りやすさを定量的に評価する尺度でもある。
単位はボルト(V)を用いる。

次の酸化還元反応のうち,標準酸化還元電位が最も高いものはどれか。(R1年第6問より)

塩素は水中の有機物、硫化水素、シアンなどの酸化分解に使用される。
又上水道の最終段階で殺菌剤として用いられる。
塩素を水に溶かすと
Cl2+H2O HClO+H++Cl
HClO H++ClO
塩素は水中では次亜塩素酸分子(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)となって酸化剤として働く。

塩素による酸化に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第7問より)

⑴ 塩素を水に溶かすと,pH が 5.6 以下では  HClOClO はほとんど存在しない。
⑵ 水中にアンモニアが存在すると,塩素と結合してクロロアミンを生じる。
⑶ HClO 及び ClO- は遊離塩素に含まれる。
⑷ 塩素の酸化力は,ClO- よりも HClO のほうが強い。
⑸ アンモニアの不連続点塩素処理では,不連続点より塩素注入率が大きくなると,残留塩素は主として遊離塩素の状態で存在している。

 

膜分離法とは

微細な穴を持つ膜を通して水をろ過し、コロイド(0.1マイクロメートル程度の粒子となって他の物質の中に分散してい折る状態のこと)レベルの懸濁物質や溶解性物質を除去する方法

 

① 精密ろ過法
  孔径が0.01~10㎛程度、微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いる
➁ 限外ろ過法
  孔径が0.1㎛以下で多糖類やたんぱく質のような水溶性の高分子物質の除去に用いる
③ ナノろ過法
  2㎚より小さい程度の粒子や高分子の除去に用いる
④ 逆浸透法
  水は透過するが,溶質はほとんど透過しない性質のある半透明膜を用いて分離する方法
⑤ 電気透析法
  イオンを選択的に透過させる膜を交互に配列、両端に直流電圧を加え、各イオンがそれぞれの膜を透過して移動する原理を利用して分離する方法、主に溶解塩類の除去に用いる

 

電気透析法に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第9問より)

⑴ 膜を通してイオンが移動する現象を利用した方法である。
⑵ イオン交換樹脂を膜状に成型したものを用いる。
⑶ 溶解塩類の除去に用いられる。
⑷ 水溶性電解質でないコロイド質や有機物は除去できる除去できない
⑸ イオン状の鉄,マンガンなどは膜に沈積して劣化を起こす原因になるので,前処理によって除去しておくほうがよい。
膜を通してイオンが移動する現象を利用する方法で、膜はイオン交換樹脂を膜状に成型したものが用いられる。
海水の濃縮あるいは脱塩について多くの実績がある。

膜分離法に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年第8問より)

⑴ 精密ろ過は微細な懸濁粒子や細菌などの除去に用いられる。
⑵ 限外ろ過膜は,分子量 1000 ~ 100 万程度の水溶性の高分子物質や微細な懸濁粒子などの除去に用いられる。
⑶ 電気透析法は溶解塩類の除去に用いられる。
⑷ 電気透析法では,水溶性電解質でないコロイド質や有機物は除去できない。
⑸ 海水淡水化などで用いられる多段式プロセスでは,前段逆浸透膜モジュール の膜透過水前段逆浸透膜モジュールの濃縮液を後段逆浸透膜モジュールに通すことで,より多くの膜透過水が得られる。 

汚水処理特論(R1年第8問より)
膜分離プロセスには

  • 全量ろ過式プロセス
     文字通り全量をろ過する方式です。循環などはせずに膜に通すだけ
  • クロスフロー式プロセス
    供給槽から膜モジュール(膜のある装置)へ流入してきた供給水の一部を、循環液として供給槽に戻す方式
  • 多段式プロセス
    全量ろ過式プロセスをいくつもつないだ方式です。段数を増やせば増やすほど水中の懸濁物質や塩分を除去できるので、海水の淡水化などの用途で用いられることが多い


汚泥の処理・処分

汚泥の脱水に関する記述として,誤っているものはどれか。(R1年第9問より)

⑴ 前処理においてろ過助剤を添加するときは,ケイ藻土,おがくず,繊維質,フライアッシュなどが用いられる。
⑵ 前処理において凝集剤を添加するときは,塩化鉄(Ⅲ),水酸化カルシウムなどの無機凝集剤や高分子凝集剤が多く用いられる。
⑶ 遠心脱水(水平形デカンター)は連続運転であるから,まず 1 サイクルの時間を決める必要がある。
⑷ ベルトプレスでは,液状の汚泥は重力による予備濃縮によって汚泥の流動性をなくしてからロールで圧搾する。
⑸ スクリュープレスは繊維分に富む汚泥の脱水に適しており,製紙工場の汚泥処理に多く用いられている。

汚泥の脱水に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年第9問より)

⑴ ルースのろ過方程式に従う場合,ヌッチェ試験で求めたろ過時間 i とろ液量V は,i/V 対 V でプロットすると直線関係が得られる。
⑵ ろ過脱水のためには,ケーキ比抵抗は大きい小さいほどよい。
⑶ ろ過助剤には,ケイ藻土,おがくず,セルロースなどがある。
⑷ ケーキに圧縮性がある場合,ケーキ比抵抗はろ過圧力が高くなると大きくなる。
⑸ 消化汚泥のろ過脱水の前処理として,汚泥の水洗が有効な場合がある。

汚泥の脱水に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第10問より)
⑷ 流動焼却炉は,階段式ストーカー炉に比べると炉内に機械的可動部が多い少ない。
流動焼却炉とは
炉の中に砂などの流動媒体を入れ、下から高温ガスを送入して流動化させ、この流動層内に汚泥を供給して燃焼させる。
階段式ストーカー炉とは
可動する火格子(ごみを撹拌、搬送する役割を持つ格子状の装置)を並べたストーカと呼ばれる燃焼装置の上にごみを投入し、焼却を行う方式

 

浮上分離とは

水の密度より小さいものは、水上に浮上する。沈殿の逆になるが、水を沈殿させると言うことでもあり、重力を利用する面において、沈殿と同じである。密度の違いを利用した分離方法で浮上分離と言う。

 

加圧浮上分離
水を加圧して空気を水の中に強制溶解させてから、大気中に開放すると、溶解した空気は非常に小さな気泡として出て来る。その時、水と固形物の境界(不連続界面)に微細な泡が発生しやすい性質があるので、気泡と固形物は接着し、浮上して来る。
・水より比重が軽い懸濁物質を水面に浮かせて分離する方法が浮上処理
・水より比重が重い懸濁物質を分離する方法が沈殿処理

加圧浮上分離法と凝集沈殿法との比較
① 浮上速度は沈降速度よりも大きい
➁ 処理水の濃度は凝集沈殿法のほうが低い
③ 所要電力は加圧浮上法のほうが大きい
④ 汚泥の水分は加圧浮上法のほうが低い
⑤ 処理水質は、加圧浮上法のほうが安定している。

加圧浮上分離法に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第6問より)
⑴ 粒子の密度が水より大きいと,浮上分離できない。浮上分離させることができます。
⑵ 微細なコロイド状の懸濁物質に対しては,前処理が必要である。
⑶ 一般に所要動力は凝集沈殿法より大きい。
⑷ 一般に固液分離に要する時間は,沈降分離に比べ短い。
⑸ 適用例として,石油精製や機械加工などの含油排水,製紙工場の排水などがある。

 

イオン交換

イオン交換は、純粋製造、排水からの有価物の回収、微量の重金属イオンの除去などに用いられ。
その処理はイオンの濃縮と水の精製を行うプロセス、ただ濃厚な再生廃液が発生するので、再生廃液の処分が重要になります。

イオン交換に関する記述として,誤っているものはどれか。(R2年第8問より)

⑴  2 相間においてイオンが互いに入れ換わる反応をイオン交換反応といい,イオン交換をする母体をイオン交換体と呼ぶ。
⑵ イオン交換樹脂は,純水製造をはじめとして,排水からのレアメタルなどの有価物の回収,微量の重金属イオンの除去などに用いられる。
⑶ イオン交換法の採用に当たっては,再生廃液の処分に関して考慮しておく必要がある。
⑷ 通常のイオン交換装置では,破過点まで吸着できるイオン量イオン交換でき得る交換基の数は全イオン交換容量と等しい。
⑸ イオン交換処理の計算を容易にするために,通常は被処理水のイオン濃度,樹脂の交換容量は炭酸カルシウムに換算して表示される。

 

活性炭吸着

活性炭は、炭素を主成分とし、他に酸素や水素、カルシウムからなる多孔質の物質です。その原料により、大きく木質系(松やヤシ殻など)と石炭系に分けられます。また、粒子径により、粉末炭(150μm以下)と粒状炭(150μm以上)に分けられます。

 

・活性炭の表面は疎水性が強いため、疎水性の強い物質ほど吸着されやすい。
・分子量が大きい物質ほど吸着されやすい。
・脂肪族よりも芳香族化合物(ベンゼンやトルエンなど)の方が吸着されやすい。
・溶解度が低い物質ほど吸着されやすい。
・溶液の表面張力を減少させる物質ほど吸着されやすい。
・吸着量や吸着速度は、水温にあまり影響されない。

活性炭吸着装置の三つの装置
・攪拌槽吸着法
主に粉末炭で用いられる方法で、反応槽に活性炭を添加し、攪拌することで、活性炭に吸着させます。その後、吸着が完了したら活性炭を沈降分離します。
・固定層吸着法
粒状炭を用い、現在最も多く用いられている方法です。構造は圧力式砂ろ過機とほとんど同じで、上部から通水し、装置内に充填された活性炭によって吸着をおこないます。 この方法は、はじめのうちは問題なく吸着が行われるものの、時間の経過とともに処理水中の有機物濃度が上昇していきます。その有機物濃度が許容値を超える点を破過点といい、この破過点を超えて使用し続けても全く吸着されなくなるため、装置内の活性炭を新炭もしくは再生炭に交換する必要があります。
・移動層吸着法
装置内に充填した活性炭を一定期間経過した後に再生炭と入れ替える方法です。一回の入れ替え量は全体の5~20%程度で、処理水は常に再生直後の活性炭に接触するため、高い吸着量を維持することができます。

活性炭の再生
 使用した活性炭を再生して反復利用する
・乾式加熱法
ロータリーキルン、ヘレショフ形多段炉、流動炉などを用いて700~1000℃の高温で処理
・湿式酸化法
加圧下で200℃以上に加熱し、吸着した有機物を酸化分解する方法です。
・薬品再生法
酸、アルカリ、有機溶媒などを使用して化学的に溶離する再生方法です。
・電気化学的再生法
電気分解したときに発生する酸素で有機物を酸化分解する方法で、活性炭を電極として使用します。
・微生物再生法
微生物によって有機物を分解、再生する方法です。

活性炭吸着に関する記述として,誤っているものはどれか。(R3年6問より)

⑴ 活性炭の吸着速度は,活性炭表面積の 2 乗に比例する。比例する
⑵ 活性炭には疎水性の強い物質ほど吸着されやすい。
⑶ 活性炭での吸着等温線がフロイントリッヒの式 X = kCn(X:単位質量当たりの吸着量,C:平衡濃度,k,n:定数)に従うとき,k が大きく n が小さいほうが低濃度から高濃度にわたってよく吸着する。
⑷ 活性炭の使用量を節減し,処理水の濃度を低くするには向流多段吸着が用いられる。
⑸ 活性炭の吸着速度は,活性炭近傍の液境膜の総括物質移動係数が大きいほど大きくなる。

 

活性汚泥法

下水を活性汚泥 (好気的条件で下水を酸化する細菌集団) とともに曝気槽で曝気,攪拌し,生物化学的酸素要求量 BODをほぼ満足させるようにすると,下水中のコロイド状ないしは溶解した物質が沈殿したり,活性汚泥に吸着されてきれいな水になる。

 

活性汚泥とは、汚水を浄化する機能を持ち、沈降性の優れた微生物の塊(フロック)。
細菌や原生動物など多種類の好気性微生物が数多く含まれています。
汚水を曝気し続けると、空気中や汚水などから入り込んで、これらの微生物は自然に増殖してきます。しかし、汚水を浄化する適切な微生物にするためには、適切な曝気量や有機物量が必要です。

種々の活性汚泥法に関する記述として,最も不適切なものはどれか。(R1年14問)

⑴ 標準活性汚泥法の BOD 汚泥負荷は,0.2 ~ 0.4 kg BOD/(kg MLSS・日)である。
⑵ ステップエアレーション法の汚泥滞留時間は,13 ~ 50 日3~6日である。
⑶ 膜分離活性汚泥法では,汚泥濃度を 8000 ~ 12000 mg/L に制御することができる。
⑷ オキシデーションディッチ法の曝気時間は,24 ~ 48 時間である。
⑸ 超深層曝気法の反応槽の水深は,50 ~ 150 m である。

SRT (汚泥滞留時間、sludge retention time)活性汚泥設備内の汚泥が排泥によって何日で新しい汚泥と入れ替わるかを表す値で、活性汚泥設備内にある汚泥量を1日当たりに引き抜く余剰汚泥量で割ることで求めることができます。
 SRT(日)=曝気槽、沈殿槽、返送汚泥管の汚泥量 ÷ 1日当たりの余剰汚泥量
一般に3日から6日の値になります。SRTが長いと汚泥が古くなって活性が低下することがあります。また、無機物も蓄積してきます。

活性汚泥法より発生する汚泥の脱水に関する記述として,正しいものはどれか。(R3年10問)

⑴ ろ過脱水において,活性汚泥などのケーキは圧縮性があるので,ろ過圧力を上げればそれに比例してろ過速度も大きくなる変化はあまりない
⑵ 凝集剤としては,ポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウム塩化鉄(Ⅲ)、水酸化カルシウムなどの無機凝集剤や高分子凝集剤がよく用いられる。
⑶ ベルトプレスは,目の粗いベルト状のろ布の上で重力によって自然脱水して脱水ケーキを得るものであるろ布の間に挟み、ロールを介して圧搾して脱水する。
⑷ スクリュープレスは,スクリューの回転によって汚泥をスクリュー軸に沿って次第に挟伱部へ送り込み,発生する圧搾圧力によって圧縮脱水するものである。
⑸ 遠心脱水機は,回転体の中に,回転体と同じ回転速度異なる回転速度で回るスクリューを内蔵して,ケーキを機外に排出する。

 

汚泥滞留時間(SRT)

SRT (汚泥滞留時間、sludge retention time)
活性汚泥設備内の汚泥が排泥によって何日で新しい汚泥と入れ替わるかを表す値で、活性汚泥設備内にある汚泥量を1日当たりに引き抜く余剰汚泥量で割ることで求めることができます。

 

SRT=(活性汚泥槽のMLSS)÷(余剰汚泥量+処理水の汚泥量)

余剰汚泥とは、下水処理工程の中で生じる汚泥(産業廃棄物)
汚泥生成量の計算式
S=a・Lr-b・Sa
S:汚泥生成量(kg/d)
 Lr:除去BOD量(kg/d)、
 Sa:ばっ気槽内汚泥量(kg)
 a:除去BODの汚泥への転換率、
 b:内生呼吸による汚泥の自己酸化率(1/d)

汚水処理特論 R1年13問
曝気槽容量 100 m3,MLSS 濃度 2000 mg/L,除去 BOD 量 72 kg/日の活性汚泥法の SRT(日)は,およそいくらか。ただし,除去 BOD の汚泥への転換率を 0.6,内生呼吸による汚泥の自己酸化率を 0.05( 1 /日)とし,曝気槽以外の汚泥量と処理水中の SS 量は無視できるものとする。また,汚泥生成量と余剰汚泥量は等しいものとする。

MLSS 濃度 2000 mg/L→単位を合わせる2㎏/L
処理水中の SS 量は無視=0として考える
曝気層内の汚泥量=2000mg/L×100m=2㎏/L×100m=200㎏
汚泥生成量(kg/d)=a・Lr-b・Sa=0.6×72㎏0.05×200=33.2㎏/日

SRT=(活性汚泥槽のMLSS)÷(余剰汚泥量+処理水の汚泥量)に代入する
SRT=活性汚泥槽のMLSS÷(余剰汚泥量+処理水の汚泥量)
=200÷(33.2+0)
=6.0日

汚水処理特論 R2年13問
ある活性汚泥法による排水処理施設では,下図のような運転がなされている。この処理施設における汚泥滞留時間(日)として,最も近いものはどれか。ただし,最終沈殿池や返送汚泥管などに存在する汚泥量は無視してよい。

 

SRTを求める公式は
SRT=(活性汚泥槽のMLSS)÷(余剰汚泥量+処理水の汚泥量)
分母である余剰汚泥量と処理水の汚泥量を求める

余剰汚泥量=8000×10=80000g/日=80Kg/日
処理水の汚泥量=990×5=4950g/日=4.95Kg/日
分子であるMLSSの量を求める
曝気槽は容量が300m3、MLSS濃度が2000mg/Lなので
MLSS量[kg]=300m3×2,000mg/L=600,000g=600Kg

SRT=600Kg(MLSSの量)÷(80Kg/日+4.95Kg/日)=7.062≒7.1

 

浮遊物(SS)

 

浮遊物質(ふゆうぶっしつ、suspended solids)とは、
水中に浮遊する粒子径2 mm以下の不溶解性物質の総称である。
日本では水質指標の1つとされており、重量濃度(mg/L)で表される。
懸濁物質(けんだくぶっしつ、suspended substance)とも呼ばれる。通常、SSと略される。

浮遊物質(SS)を多く含む水は透視度が下がり、太陽光が遮られることによって藻類の光合成が阻害される。また、汚濁の進んだ水では有機態のSSの比率が高くなり、その有機物の分解に溶存酸素が消費されるため、生態系に大きな影響を与える。

 

 

 

汚泥容量指標 (SVI)

SVI(Sludge volume index)とは、活性汚泥の沈降性を示す指標の1つである。汚泥容量指標、または汚泥容積指標とも呼ばれる。

活性汚泥は、活性汚泥の濃度を表す指標の値が大きいほど(固形物の濃度が濃いほど)、沈み難く(濃縮し難く)なり、の値も大きくなる。そこで、SVIでは、SVをMLSSで割ることで、活性汚泥の正味の沈みやすさ(濃縮しやすさ)を評価している。

汚水処理特論 R2年12問
BOD 濃度 250 mg/L,流量 200 m3/日の排水を曝気槽 100 m3 の活性汚泥法で,汚泥負荷 0.25 kg BOD/(kg MLSS・日)で処理しており,Sv(30 分間沈降後の汚泥容積)は 300 mL/L であった。汚泥容量指標 SVI(mL/g)を求めよ。

Sv(30 分間沈降後の汚泥容積)は 300 mL/LはわかっているのでMLSS濃度を求める

L:BOD汚泥負荷=0.25
BOD:BOD濃度=250
Q:流入水量=200
V:曝気槽の容量=100
0.25=(250×200)÷(MLSS濃度×100)
MLSS濃度×100=50,000÷0.25=200,000
MLSS濃度=200,000÷100=2000mg/L=2g/L
SVIの公式に代入すると

SVI=300mL/L÷2g/L=150mL/g

活性汚泥浮遊物(MLSS)
曝気槽の中の活性汚泥浮遊物(mg/L)の事を意味する。
反応タンク(ばっ気槽)内の混合液中の有機物などの濃度をいい、微生物濃度の指標としても用いられます。反応タンクの管理指標として用いられます。

活性汚泥沈殿率(SV)
SVとは、活性汚泥の沈降性を示す指標であり、メスシリンダー中で一定時間汚泥を静置した際の、汚泥の割合のことである。
活性汚泥沈殿率とも言われる。沈殿槽界面を管理するのに、最も重要な測定項目の一つ。


 

生物処理法

排水の中に含まれる汚濁物質を、自然界に存在する各種の微生物や細菌を利用して有機物を分解する処理方法です。
代表的な生物処理法は、活性汚泥法です。
活性汚泥は、原生生物・細菌を含む生物群のこと(スラッジ状で汚泥と呼ばれる)。
活性汚泥法で利用する微生物は細菌が主体で、真菌類(カビ)、藻類、原生動物などから構成される微生物生態系です。これらの微生物の活動や食物連鎖により、水を浄化します。つまり、生物処理法は化学薬品を扱うこととは違い、「生き物を飼う」ことです。

汚水処理特論 R1年15問
生物処理の担体添加法に関する記述として,誤っているものはどれか。

⑴ 曝気槽にスポンジなどの支持体を添加し,支持体を曝気により流動状態を維持しながら酸化分解する方式である。
⑵ 曝気槽に流動している支持体を保持するため,支持体が通過しない目幅のスクリーンが設けられる。
⑶ 他の生物膜法(固定床など)で見られる閉塞などのトラブルは少ない。
⑷ 支持体に微生物を保持する結合固定化法のほか,微生物をゲルに閉じ込める包括固定化法がある。
⑸ 支持体表面の微生物の活性が低下すると付着力が弱くなり,微生物が剥離するので,硝化処理には用いられないこのようなことはない。

 

物理化学処理装置の維持管理

汚水処理特論 R1年18問
物理化学処理装置の維持管理に関する記述として,誤っているものはどれか。
⑴ 貯留槽用の曝気ブロワーは,専用とすることが望ましい。
⑵ pH 計は,定期的な標準液による校正と,電極内部液の補給,電極の洗浄作業が必要である。
⑶ 凝集沈殿装置の最適な凝集条件は,排水を一定の条件下で攪拌しながら凝集剤添加量及び pH 値を変えて凝集を行って決定する。
⑷ ろ過装置で捕捉できる浮遊物質の量は,被ろ過水の浮遊物質濃度とは無関係にほぼ一定である。
⑸ ORP 計は,フタル酸水溶液を用いて校正する校正はできない。

汚水処理特論 R2年18問
酸化還元装置及びその維持管理に関する記述として,誤っているものはどれか。

⑴ ORP 計によって酸化剤又は還元剤を所定電位になるように注入する。
⑵ ORP 計は pH 計と同様に検量線を用いた校正が定期的に必要である何を使っても校正はできない。
⑶ ORP 計の電極面の汚れを清掃し,硫酸鉄(Ⅱ)溶液などで指示値を確認する。
⑷ COD の除去に次亜塩素酸ナトリウムあるいはオゾンを用いて化学的酸化をする場合は,通常 ORP 制御は行わない。
⑸ 着色排水の脱色では,酸化剤の添加量はあらかじめ実験によって決定する。


 

全窒素の測定

汚水処理特論 R3年23問
全窒素の測定に関する記述として,誤っているものはどれか。
⑴ 紫外線吸光光度法では,試料にペルオキソ二硫酸カリウムの酸性溶液アルカリ性溶液を加えて,高圧蒸気滅菌器で加熱酸化分解を行い,試料中の窒素化合物を硝酸イオンに変える。
⑵ 紫外線吸光光度法では,分解終了後の試料溶液の pH を 2 ~ 3 に調節し,硝酸イオンによる波長 220 nm の吸光度を測定して硝酸イオン濃度を求め,窒素濃度に換算する。
⑶ 総和法では二つの試料をとり,その片方で亜硝酸イオンと硝酸イオンに相当する窒素の量を,他方でアンモニアと有機体の窒素化合物に相当する窒素の量を求め,それらの和を全窒素とする。
⑷ 流れ分析法では,試料中の窒素化合物を酸化分解し,その結果生じる硝酸イオンの定量を流れ分析法によって行い,全窒素を定量する。
⑸ 流れ分析法は懸濁物質の多い試料をそのまま測定するのには適していない。