09.水質有害物質特論 Word検索

フェライト法

フェライト法
重金属を含む排水中に鉄(Ⅱ)イオンを適当量加え,アルカリを添加後,60 ℃以上に加熱すると,重金属イオンを含む強磁性マグネタイトの結晶が生成し,分離回収される。この方法は小規模排水の処理に適した処理技術と考えられている。

鉄、マンガン、コバルト、ニッケルといった鉄族元素のほか、銅、鉛、スズ、カドミウム、クロム、ヒ素などの金属の回収に有効です。

フェライト(ferrite)は、
酸化鉄を主成分とするセラミックスの総称である。 強磁性を示すものが大半であり、磁性材料として広く用いられている。 軟磁性を示すものをソフトフェライト、硬磁性を示すものをハードフェライトと呼ぶ。

水酸化物法、凝集沈殿処

水酸化物法
カセイソーダや消石灰を添加して処理する方法
重金属類を含んだ排水にアルカリを加えると、金属が不溶性の水酸化物塩となって沈殿するため、水中から分離・除去することができます。
多くの金属は酸性条件下では水に溶けやすく、塩基性条件下では不溶性となりやすいです。

この方法が最も広く採用されているのは、
(1)最適pH、処理到達値の理論計算が容易、
(2)pH計で薬注制御が可能、
(3)使用薬品が安価でどこでも入手できる。

硫黄化合物系の液体キレート剤(高分子重金属捕集剤)の開発によって、最近では適用例が多くなっている。

「塩基性条件」「酸性条件」とは
水溶液中で、 OH-イオン濃度よりもH+イオン濃度が多い状態を酸性状態
H+イオン濃度よりもOH-イオン濃度が多い状態を塩基性状態 と言います。

置換法、キレート剤

置換法
ほとんどの重金属がアルカリ剤(苛性ソーダ、消石灰、水酸化マグネシュウム、石灰石など)に反応し水酸化物となって沈殿する原理を応用しています。

(R2年 第4問より)
⑴ キレート剤で封鎖されている重金属を他の金属で置換し,置換された重金属を水酸化物として沈殿させる方法である。
⑵ 置換法には,Mg 塩法と Fe + Ca 塩法がある。
⑶ Mg 塩法は,汚泥減容効果や COD 吸着性などの優れた特性を有する。
⑷ キレート剤の濃度が低くなれば,錯体は不安定となり,水酸化物法で処理できることもある。
⑸ 置換反応は,原則として酸側で行ったほうがよい。

スラッジ処理

スラッジとは
工場廃水や下水処理に伴って出る泥状物。汚泥。へどろ。
タンク内の油分・さびなどの沈殿物。
汚泥ポンプでスラッジ濃縮槽に送られ、スラッジ固形分を濃縮します。これをスラリーといいます。

コンクリートのスラッジ水は、残コンの処理や、アジテーター車の洗浄の際などに、どうしても発生してしまいます。 日本の生コン出荷量の1.3%程度は残コンとして処理されているそうです。
(R3年 第4問より)
⑴ スラッジをコンクリート固化しても,有害物質の溶出を完全に防ぐことはできない。
⑵ 炭酸塩の脱水スラッジは,水酸化物スラッジと異なり,埋立処理した場合は,雨水や地下水によって重金属が溶出しやすい。
⑶ スラッジを製錬所などの溶鉱炉に戻して,再利用する山元還元法がある。
⑷ 焼結処理法では,クロムのように,酸化されて水によく溶解する形になる場合がある。
⑸ スラッジからの有価金属の回収においては,金属含有量とともに含水率が重要である。

重金属と錯体(さくたい)を形成し処理を阻害する物質

①酒石酸:オキシカルボン酸錯体
➁EDTA:アミノポリカルボン酸錯体
③しゅう酸:カルボン酸錯体
④アンモニア、エチレンジアミン:アンミン錯体
⑤くえん酸:オキシカルボン酸錯体
⑥モノ、ジ、トリエタノールアミン:エタノールアミン酸錯体

錯体とは
金属イオンに配位子(ligand)と呼ばれる分子やイオンが結合したものが錯体。

一つの原子あるいはイオン(普通は金属イオン)を中心として、その周りにいくつかの他の原子、イオン、分子あるいは原子団(これらを配位子という)が、方向性をもって立体的に配位し、一つの原子集団をつくっているとき、これを錯体といっている。

凝集沈殿方式

循環水処理の多くは、「凝集沈殿方式」と呼ばれる方式で行われています。
凝集剤を使用して循環水に含まれる汚染物質の微小な粒子を結合させ、粒子を大きくして沈殿させる方式です。

重金属含有水を凝集沈殿法で取り除く方法は、水酸化物法・共沈法・硫化物法の3種類があります。

カドミウム

カドミウムの性質(R2年 第3問より)
・カドミウムと酒石酸との錯体は安定であり,水酸化物法による処理は困難である。
・鉛化合物には 2 価の鉛化合物と 4 価の鉛化合物があり,排水中では主に 2 価イオンとして存在する。
・鉛は,強アルカリ性では水酸化物イオンと錯体をつくって再溶解する。
・鉛とアンモニアとの錯体は安定であり,水酸化物法による処理は困難である。

有害物質として知られ。
人体にとって有害であり、体内に吸収されると腎臓に機能障害を引き起こすなどするため、取り扱い、及び、鉱山などからの排水の管理には注意を要する。
日本ではカドミウムによる環境汚染により、
富山県の神通川流域で発生したイタイイタイ病が問題となった。
また、カドミウムとその化合物は、WHOの下部機関IARCよりヒトに対して発癌性を有する

六価クロム排水の処理

毒性の強い6価クロムは、他の重金属とは異なり、水酸化物にならない、沈殿分離することができない。
そこで還元剤を使って6価クロムを3価クロムにします。この3価クロムは、他の重金属と同様にアルカリ剤の添加によって水酸化クロムとして沈殿除去することができます。

6価クロムを3価クロムにする還元剤には、一般的に重亜硫酸ソーダか硫酸第一鉄が用いられます。
クロム処理には薬品還元、電解還元、イオン交換などがあります。

水銀排水の処理

水銀排水の処理について
硫化物沈殿法、活性炭吸着法、キレート樹脂法などの4種類がある。

(過去問より)
硫化物沈殿法は、
硫化ナトリウムの添加量が水銀濃度に比べて過剰になると、水銀の再溶出が起こる。
硫化ナトリウムと塩化鉄(Ⅲ)を用いて処理する場合、鉄が多硫化鉄を形成して処理水が白濁することがある。
鉄(Ⅱ)又は鉄(Ⅲ)を併用することにより,硫化水銀の再溶解を抑制することができる。

水銀キレート樹脂は、
ジチオカルバミド酸基を持つものなどがある。 (水銀を選択的に吸着除去する方法)
有機水銀排水は、塩素によって酸化分解して完全に塩化物とした後、硫化物法で処理する。

活性炭吸着法
吸着法における吸着剤として活性炭を用いる場合、pHは1~6の酸性で水銀の吸着効率が高くなる。

ひ素排水の処理

(R1.2年度第6問より)
・排水中のひ素の形態には、ひ酸イオンと亜ひ酸イオンがある。
・鉄(Ⅲ)塩の共沈処理効果は,アルミニウム塩の共沈処理効果よりも高い。
・共沈剤としては、
アルミニウム塩より鉄塩のほうが効果が高い。

・鉄(Ⅲ)塩を用いた場合,ひ素(Ⅴ)はひ素(Ⅲ)よりも共沈処理が容易である。

・鉄(Ⅲ)塩を用いた場合,最適共沈 pH は 4~5である。

・カルシウム塩及び炭酸ナトリウムを用い,アルカリ性側で共沈処理が可能である。
また3価のひ素よりも5価のひ素のほうが共沈処理は容易である。

・空気による曝気処理では、亜ヒ酸の酸化は困難である。
(オゾンでは酸化できるが、次亜塩素酸ナトリウムでは酸化できない)

曝気処理

曝気処理とは
生物酸化による下水処理を行う際,好気性微生物を主体とする活性汚泥を育てたり,その活性度を維持するためには,常に十分な溶存酸素を与える必要がある。この作業を曝気という。

排水から分離するのが困難な有害物質はどれか。(R2年第10問より)
・アンモニア
・トリクロロエチレン
・テトラクロロエチレン
・ベンゼン
・1,4‒ジオキサン
曝気により排水から分離するのが困難な有害物質である(H29年第10問より)

シアン排水の処理

シアン化合物にはアルカリ金属塩金属シアノ錯体がある
水溶液で遊離のシアン化物イオンを生成する有毒である。

シアン化水素は、常温では無色透明な液体で、26℃以上で気体になる、極めて有毒、水によく溶ける(水溶液では遊離の有毒なシアン化物イオンを発生、アルカリ性である)。

シアン排水の処理法として重要なものには、以下の5つ
・アルカリ塩素法
(塩素系の酸化剤を用いて、シアンを二酸化炭素と窒素に分離する方法)
次いでpHをアルカリ性にしてさらに塩素を添加す。
pH10以上で塩素剤を添加する一段反応と、pH7~8で塩素剤を添加する二段反応でシアン(CN)を窒素(N2)と二酸化炭素(CO2)に分解します。

・紺青法
(鉄を含んだシアン排水は、一般のシアン排水と分離して処理する、Fe(Ⅱ)又はFe(Ⅱ)の添加で難溶性塩として凝集沈殿除去する方法

・オゾン酸化法
別途詳細あり

・電解酸化法
(濃厚なシアン廃液を処理することに適している、シアン廃液を電気分解し、陽極シアンイオンを酸化分解する)

生物分解法
(活性汚泥にシアン排水を少量ずつ添加し、微生物に耐性を持たせシアンを分解、資化する菌を増殖させる方法です。)

(R2年第9問より)

シアン排水のオゾン酸化法

シアン排水のオゾン酸化法による処理

(H30年第7問より)
シアンは窒素と炭酸水素塩に酸化分解される
ニッケルシアノ錯体は、オゾンにより酸化分解され、Ni2O3を生成する。
酸化分解反応において、微量の銅は触媒効果を持つ。
処理の律速段階は、オゾンの水への溶解過程である。
オゾンの酸化力は強力であり、金、銀のシアノ錯体も容易に分解できない

セレン排水の処理

セレン排水の処理について
セレンは毒性の強い、生体必須元素でもある。
セレンは電気特性があり、整流器、太陽電池、複写機感光体、赤色顔料、触媒、ガラス着色剤なのどの用途がある。
セレンの排水処理方法は、共沈法、吸着法、イオン交換法、金属還元法があり、現在は鉄塩共沈法である。

(R2年 第7問より)
・活性アルミナによる吸着法は,セレン(Ⅳ)に対して有効だが、セレン(Ⅵ)には効果がない
・セレン(Ⅳ)の共沈処理では,アルカリ性側より,中性から弱酸性にかけて除去効果が高い。
・セレン(Ⅳ)には,鉄(Ⅲ)塩による共沈処理が有効である。
・金属鉄によりセレン(Ⅵ)の還元が可能である。
・嫌気性条件下で微生物によりセレン(Ⅵ)を金属セレン(Se0)に還元する技術が開発されている。

アンモニア、亜硝酸、硝酸排水の処理

アンモニア(NH3
常温で刺激臭のある無色の気体。水のよく溶解しアンモニアイオンを生成。

亜硝酸(HNO2
窒素のオキゾ酸(酸素酸)の一つ、水溶液中では不安定で加熱すると分解する。

硝酸、硝酸塩
もっとも重要なオキゾ酸(酸素酸)、アンモニアを触媒酸化する方法で合成される。

アンモニアストリッピング法
・化学反応によって排水のpHをアルカリ性にしてアンモニア性窒素を除去する方法
  pHが高くなると遊離アンモニアの存在比が高くなる。
  遊離アンモニアは、曝気やスクラバーによって容易に水中から除去できる。

温度が高いほうがアンモニアイオンをアンモニアガスに変える反応の速度が速くなる

オキゾ酸(酸素酸)

オキゾ酸(酸素酸)
酸素を含む無機酸で,中心原子に結合する原子がすべて酸素であり,酸素の一部または全部に水素がついて水酸基となり,水溶液中でこの水素が解離して酸の性質を与える。硫酸,硝酸,リン酸など無機の重要な酸はほとんど酸素酸です。

フッ素排水の処理

科学的性質
フッ素(F)はハロゲン元素の一つであり、常温で特異な臭いと、強い腐食性を持つ気体
地殻中に蛍石、氷晶石(ひょうしょうせき、産出が比較的稀なハロゲン化鉱)などのフッ素化物として存在する。

吸着法
フッ素吸着樹脂では希土類水酸化物を交換体とした選択吸着樹脂がある。

ふっ素が30~50mg/L以上の高濃度の排水を処理するときには、
ふっ化カルシウム法でふっ素濃度10~20mg/L程度まで下げて
アルミニウム塩による水酸化物共沈法を使って排水基準(8mg/L)以下まで処理する。

ほう素排水の処理

・ほう素排水処理における凝集沈殿には、アルミニウム塩と水酸化カルシウムの併用法が用いられる。
・ほう素排水処理における吸着法には、N-メチルグルカミン形イオン交換樹脂が用いられる。

pHの液性

pH7を中性とし、それ未満を酸性、それより大きければアルカリ性としています。
pH7よりも値が小さければ小さいほど酸性の性質が強く、
値が大きければ大きいほどアルカリ性の性質が強いことになります。


ジオキサン排水の処理

1.4 ジオキサン
化学工業、医薬品製造業、繊維工業、一般機械器具製造業、で抽出・精製・反応用溶剤として用いられている、
常圧常温において無色透明の液体の有機化合物、親水性が高く、沸点101.1℃、弱いエーテル臭がある。
分子式は C4H8O2 である。

(R3年第10問より)
無色透明の液体で水と任意に混和する。(疎水性が高いとは水と油のような関係で分離しやすい)
BOD や CODMn(重クロム酸カリウム) としてほとんど検出されない。
活性炭による吸着量は少ない。
オゾン酸化,促進酸化,フェントン酸化などの酸化分解法によって処理される。
曝気により排水から分離するのが困難な有害物質である(H29年第10問より)

処理方法
酸化作用を持つオゾン処理やフエントン法、逆浸透法などがある。

有機塩素系化合物排水の処理

トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物の排水処理方法
・揮散法
排水に微量溶解している有機塩素化合物は、空気を吹き込むと大気中に拡散するため、排水中から除去できる。拡散した有機塩素化合物は、活性炭吸塔を通して吸着除去する。
・活性炭吸着法
有機塩素化合物は疎水性なので活性炭で吸着できる
・酸化分解法
 有機塩素化合物は酸化剤で二酸化炭素と塩化物イオンに分解できる
・生物分解法 
有機塩素系化合物の分解能力を持つ微生物の働きで分解する方法。
以上の4種類がある

イオンクロマトグラフ法

低交換容量のイオン交換体を分離カラムとして用いる高速液体クロマトグラフ法の一種。
電気伝導率の低い有機酸を溶解液としてイオン構成分を分離する。
検体としてはフッ素及びその化合物がある。
イオンクロマトグラフ法には、
サプレッサ法
バックグラウンドとなる電気伝導度を低減するための装置で、膜透析形、カラム除去形などがある。
ノンサプレッサ法
当量電気伝導率が比較的低い有機酸を溶離液を使用します。

(R2年 第12問より)
溶離液を移動相とし,イオン交換体などを固定相とした分離カラムでイオン種成分を分離する。
カラム充填剤はイオン交換体非極性シリカゲルを使用する
検出器には,主に電気伝導度検出器が用いられる。
サプレッサは,バックグラウンドとなる電気伝導度を低減するための装置で,膜透析形,カラム除去形などがある。
当量電気伝導率が比較的低い有機酸を溶離液として用いるノンサプレッサ 装置も普及している。
アンモニア,アンモニウム化合物,亜硝酸化合物及び硝酸化合物の検定に用いられる。

有害物質とその検定法の組合せ

有害物質とその検定法の組合せ

有害物質検定方法
カドミウム化合物ICP発光分光分析法
ICP質量分析法
フレーム原子吸光法
電気加熱原子吸光法
鉛化合物ICP発光分光分析法
ICP質量分析法
フレーム原子吸光法
電気加熱原子吸光法
六価クロム化合物ICP発光分光分析法
ICP質量分析法
フレーム原子吸光法
電気加熱原子吸光法
ジフェニルカルバジド吸光光度法
ジフェニルカルバジド発色法による流れ分析法
ひ素化合物水素化物発生原子吸光法
水素化物発生ICP発光分光分析法
ICP質量分析法
ジエチルジチオカルバミド酸銀吸光光度法
ほう素化合物ICP発光分光分析法
ICP質量分析法
メチレンブルー吸光光度法
アゾメチンH吸光光度法
セレン化合物ICP質量分析法
水素化合物発生原子吸光法
水素化合物発生ICP発光分光分析法
3,3′-ジアミノベンジジン吸光光度法
ふっ素化合物ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法
イオン電極法
流れ分析法
イオンクロマトグラフ法
総水銀還元気化原子吸光法
加熱気化原子吸光法
加熱気化-金アマルガム捕集原子吸光法
アルキル水銀ガスクロマトグラフ法
薄層クロマトグラフ分離-原子吸光分析法

検定方法と有害物質の組み合わせ

検定方法有害物質
ICP発光分光分析法鉛化合物、六価クロム化合物、カドミウム及びその化合物、鉛及びその化合物、ほう素及びその化合物
水素化物発生原子吸光法ひ素化合物
水素化物発生ICP発光分光分析法ひ素化合物、セレン及びその化合物
ICP質量分析法鉛化合物、六価クロム化合物、ひ素化合物、カドミウム及びその化合物、鉛及びその化合物、ほう素及びその化合物、セレン及びその化合物
フレーム原子吸光法鉛化合物、六価クロム化合物、カドミウム及びその化合物、鉛及びその化合物、セレン及びその化合物
薄層クロマトグラフ分離-原子吸光法アルキル水銀
電気加熱原子吸光法鉛化合物、六価クロム化合物、カドミウム及びその化合物、鉛及びその化合物
ジフェニルカルバジド吸光光度法六価クロム化合物
ジフェニルカルバジド発色法による流れ分析法六価クロム化合物
ジエチルジチオカルバミド酸銀吸光光度法ひ素化合物
高速液体クロマトグラフ法チウラム
イオン電極法フッ素及びその化合物
流れ分析法フッ素及びその化合物、シアン化合物
イオンクロマトグラフ法フッ素及びその化合物
ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法フッ素及びその化合物
ピラゾロン吸光光度方シアン化合物
ガスクロマトグラフ法ポリ塩化ビフェニル(PCB)、1,4-ジオキサン、アルキル水銀
ガスクロマトグラフ質量分析法ポリ塩化ビフェニル(PCB)、1,4-ジオキサン

ガスクロマトグラフ法

気体や液体に含まれる成分の性質や量(濃度)を測定する装置。
排水中の塩素化炭化水素類や有機リン化合物などの有機ハロゲン化合物の検定に使用される。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)、1,4-ジオキサン、アルキル水銀などが検体となる。

検出器検出できる化合物
熱伝導度検出器(TCL)いろいろな気体の検出に利用できるが,感度はあまり高くない。キャリアガス以外の全ての化合物
水素炎イオン化検出器(FID)有機ガスに対して熱伝導度検出器の 1000 ~ 10000倍の高感度を示す。有機化合物(ホルムアルデヒド、ギ酸を除く)
電子捕獲検出器(ECD)有機ハロゲン化合物の高感度分析に有効である。有機ハロゲン化合物、有機金属化合物
炎光光度検出器(FPD)含硫黄化合物及び含りん化合物を選択的,高感度に検出する。無機,有機イオウ化合物、無機,有機リン化合物、有機スズ化合物
熱イオン化検出器(FTD)含窒素有機化合物及び含りん有機化合物を選択的,高感度に検出する。有機窒素化合物、無機,有機リン化合物

ガスクロマトグラフ法においての前処理方法

前処理方分離、濃縮する化合物測定物質
パージ・トラップ法揮発性有機化合物テトラクロロエチレン
ヘッドスペース法揮発性有機化合物塩化ビニルモノマー
溶媒抽出法揮発性有機化合物、農薬シマジン(除草剤)、PCB
固相抽出法農薬チオベンカルブ(除草剤)
活性炭抽出1,4‒ジオキサンのみ1,4‒ジオキサン

シアン化合物

(R1年 第15問より引用)
シアン化合物の試験では,水中のシアン化水素酸,シアン化物イオン,金属シアノ錯体 などのすべての形態のものを, EDTAを共存させた pH2 以下のりん酸酸性下で蒸留することにより,シアン化水素として留出させてNaOH 溶液に捕集した後,捕集液中のシアン化物イオンを 4‒ピリジンカルボン酸‒ピラゾロン吸光光度法などで定量して,シアン化合物の濃度を求める。

(R3年 第15問より引用)
シアン化合物の検定に関して
・試料を保存する場合は,水酸化ナトリウムを加えて,pH を約 12 とする。
・試料中に残留塩素などの酸化性物質が共存する場合は,アスコルビン酸などを加えて還元する。
・EDTA を共存させ,pH2 以下のりん酸酸性下で加熱蒸留して,シアン化合物をシアン化水素として留出させる。
・コバルト,水銀のシアノ錯体は,分解されにくく,大部分がシアン化水素はあまり発生しない
・留出させたシアン化水素は,ピリジン-ピラゾロン吸光光度法などで定量する。

ICP 質量分析法

ICP 質量分析法について

(R2年 第13問より引用)
・ICP は,分析対象元素などをイオン化する働きをする。
・質量分析計は,質量数/電荷数の比に応じて,イオンを分離し,測定する働きをする。
・インターフェース部は,大気圧下の ICP と高真空状態の質量分析計を結合する働きをする。
・総水銀,アルキル水銀化合物の検定として用いていない
・ひ素の測定においては,塩酸,塩化物イオンを多量に含む試料では,これらに起因するスペクトル干渉を補正又は低減化する手法を用いる。